大学文系新入生向け読書のススメ(その2)

前回に引き続き、今回まで、大学の比較的早い段階で読んでおくと参考になるような新書(又は、それと同等程度のレベル)の本を、何冊か紹介したいと思います。無学者の私が、偉そうにこんな記事を書くのもなんだかなぁと思わなくもないですのが、何かの参考になれば幸いです。

学者の手による、新聞などで紹介された社会調査の記事などを素材としながら社会調査や統計データとの向き合い方を分かりやすく教えてくれる本です。タイトルからも明らかなように、やや刺激的な書きぶりの本ではありますが、内容的には社会調査論や統計学を踏まえたオーソドックスなものです。この手の本は、海外の類書の翻訳版もありますが、これがとっつきやすいように思います。

文系でも、社会学、心理学、経済学などの分野を勉強している人は、統計学や社会調査論などはカリキュラム上、学ぶのではないかと思いますが、それ以外の分野の文系の学生というのは、自分で意識的に勉強しない限りは、この手の分野を学ぶ機会は限られているように思います。この本を読んだ次のステップとしては、社会調査論のテキストを読んだ上で、統計学のテキストに進むと良いのではないかと思います(本来、順序的には統計学が先かと思いますが、文系の方は統計学の本を読むと数式のオンパレードで面くらってしまう人も少なくないと思いますので、社会調査論の次に統計学という言い方をしています。)。

10代からの情報キャッチボール入門――使えるメディア・リテラシー

10代からの情報キャッチボール入門――使えるメディア・リテラシー

  • 作者:下村 健一
  • 発売日: 2015/04/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
新聞の正しい読み方:情報のプロはこう読んでいる!

新聞の正しい読み方:情報のプロはこう読んでいる!

  • 作者:松林 薫
  • 発売日: 2016/03/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

上の本は、元ニュースキャスターによる中高生向けで分かりやすいメディアリテラシーの本です。大学生には簡単すぎるかもしれませんが、良い本だと思いますのでご紹介します。

下の本は、元新聞記者の手による新聞の読み方に関する本です。私たちは社会で起きる出来事の多くを直接見聞きするのではなく、報道を通して知ります。報道の読み解き方というか、発信の内容については、ある程度決まったルールや留意点というのがありますが、学校ではあまりしっかり教えてくれません。社会人にななれば、仕事で職場で新聞の切り抜きをして社会の動向を分析したり、場合によってはマスコミの方の取材を受けたりする場面も出てくることもありますので知っておいて損はないと思いますちなみ、さらに進んで学びたい方は、メディアリテラシーの本やジャーナリズム論、新聞学、メディアと政治などに関する分野のテキストを読むと良いと思います。

新版 議論のレッスン (NHK出版新書 552)

新版 議論のレッスン (NHK出版新書 552)

  • 作者:福澤 一吉
  • 発売日: 2018/05/08
  • メディア: 新書
 

上2冊は、学者の手による議論(主張)の構造や技法を解説した本です。トゥルーミンモデルと言われる捉え下で、議論を構造的に整理したり組み立てたりしていきます。下は、学者の手による論理学の入門的な本です(2021.12.29に三浦先生の本から野矢先生の本に変更)。ざっくりといえば、トゥルーミンモデルは、日常的な議論に使える考え方を提供してくれるもので、論理学は、よりより厳密な思考を扱っていくものです。

私自身は、論理学は大学の教養課程の授業で三段論法、誤謬推論、記号論理などを習い、トゥルーミンモデルは、足立幸男先生の著作で読んだ程度ですが、(論理学のテキストは専門テキストを数冊、トゥルーミン関係はトゥルーミンの翻訳も含めて数冊持っていますが)上記3冊は細かくは読んでいません。類書もありますが、売れ筋やら入手のし易さ、初見の印象、とっつきやすさから上記三冊を紹介しました。

さて、次回は、具体的に、大学時代身につけておくと便利な読書力へたどり着くトレーニングについて書いていきたいと思います。