最近、読み直した本、読んだ本。

 「教養論」論について非常に興味深い2冊として…

教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)

教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)

グロテスクな教養 (ちくま新書(539))

グロテスクな教養 (ちくま新書(539))

があります。前者は3度目、後者は2度目の読書でしたが、どちらも非常に面白い。やはり、本というのは1回目よりも2回目、2回目よりも3回目の方が面白く読めるものだなーと思います。
 この2冊は、いわゆる旧制大学旧制高校について語る上で、また戦後日本の大学教育を語る上でも非常に重要でるあると考えられる「教養主義」について取り上げた本です。両方とも文庫本ですが、非常にレベルが高い良書です。前者は、社会学的なアプローチの本で読みす中にも学術本に似た匂いを放っていますが、後者は多数のテクストを縦横無尽に取り上げ辛辣なコメントも登場する新書ならではといった感じ本です。
 なお、この手の本を読む上での背景知識としては、文庫として入手しやすい天野郁夫『教育と選抜の社会史』(ちくま学芸文庫)や、潮木守一『京都帝国大学の挑戦』(講談社学術文庫)などが有効かと思います。
 なお、教育関係で現在読書中なのが、
女学校と女学生―教養・たしなみ・モダン文化 (中公新書)

女学校と女学生―教養・たしなみ・モダン文化 (中公新書)

で、こちらを読了後に読む予定なのが、
ミッション・スクール (中公新書)

ミッション・スクール (中公新書)

です。
 また、教育関係としてはだいぶ趣が違いますが最近出た本として
大学入試の戦後史―受験地獄から全入時代へ (中公新書ラクレ)

大学入試の戦後史―受験地獄から全入時代へ (中公新書ラクレ)

を本日の午前中に読みました*1。これまた非常に興味深い内容でした。後半の日本社会の分析的な部分については、異論なしとはしませんが、前半の各大学の入試をめぐる内部的な話とかは非常に読んでいて面白かったです。ただ、この本で具体的な話が取り上げられていたのは旧帝・私大有名校が中心だったので、いわゆる一般的な地方国公立と私立大学などの実情はどうなのかというのが非常に気になるところではあります。
 あと、本書中では偉く高評価だったQ大AOについて、元AO生としてはAO導入時の執行部の目論見とかが面白かったり、また多少批判的にコメントしたいことがあるのですが、それはまた次の機会ということで。

 さらに続きますが、現在読んでいる本として

自主規制の公法学的研究 (九州大学法学叢書 1)

自主規制の公法学的研究 (九州大学法学叢書 1)

があります。GW前にやっと入手して、現在は読書の途上です。実は、他の買いだめしておいた行政法関係の専門書をそっちのけで読んでいるのですが、「自主規制」という非常に興味深いテーマを取り扱っています。

 なぜ、「興味深い」か個人的な話を少ししますと、就職時に削除した旧日記「課題研究のための学習ノート」には書いていたのですが、私は学部4年のときの立法学ゼミの課題研究は、環境監査・認証制度をテーマとしていました。そのときに関連で学習した、JIS法や消費生活用製品安全法を、行政作用法上、どのように位置づけるべきなのかという疑問があって、同じ時期に行政法ゼミの課題研究*2で誘導論(誘導の仕組み)を学んだこともあり「情報による誘導(?)」という位置づけを行うことで自分自身を一応納得させてさせることにしました*3
 しかし、そのように誘導論的な立場から認証制度を捉えようとすると「グリーン経営認証(エコモ財団)」や「エコアクション21」などのように、実態的には行政裏が糸を引いているのではなかろうかと思われるものの、実際的には公益法人等によって行われている認証制度などは、行政活動として考察の対象として取り込むことが出来なくなってしまいます。もちろん、法学的にはそれでよいのだという態度もありうるのですが、個人的には少し満足のいかない部分がありました。
 本書は、「自主規制」という分析視角を導入することで、「グリーン経営認証」「エコアクション21」などの法的−非法的の中間領域に存在する様々な規制手法(本書の類型に従えば、誘導、監査認証、団体自立、団体参画)にアプローチしていて、私にとっては「目から鱗」といった心境です。まだ読書途上なのですが、目次を一読しても、実定法、歴史、比較法など様々な目配せが効いていて読んでいて飽きさせない印象です。GW期間中の時間を有効に利用して、早めに読み終えてしまいたいと思います。

*1:就職してから、ずっと本は買っても読書意欲は減退の一途を辿っていたのですが、今回は大体2〜3時間で読み終わることができたので、長いスランプを抜け出した気がします。

*2:福岡市ごみ有料化問題に関する研究

*3:例えば、宇賀・概説Ⅰでは、情報によるインセンティブとして紹介されている