- 作者: 猪野健治
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/12/01
- メディア: 新書
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通史の部分では、戦中・戦後の混乱期から戦後の復興・高度経済成長・バブル経済・平成不況へと至る中で、山口組等が表社会の需要にマッチしていく形で様々な事業を展開してきたことが分かりやすく書かれています。そのような裏側で、山口組等の組織を生む背景になっている差別や貧困の問題に根本的な解決が計られないまま、世論の高まり等を背景に暴力団に対する司法・行政的な取締りだけが強化されている現状の中で、やくざ組織も自ら生き残りを掛けて精鋭化し組織内の問題児を排除していかざるをえなくなっていること。そして、その結果、社会をドロップアウトした、または、ドロップアウトせざるをえなかった人々の最後の受け皿がなくなってしまい、社会のどこからもコントロールも受け付けないような人々が増えている状況を描き出しています。
著者は、やくざ関係の著書を沢山書いている方のようですが、やくざ社会を美化しているわけではなく、一般の人には知られることのない「やくざ社会」の実態を描きながら、実はその反対側にいる人々に対して、やくざ社会を生み出している「表社会」に潜む問題に対して警鐘を鳴らしているのではないかと思いました。
新書で手頃なのでおススメの1冊です。