最近読んだもの

  • 木佐茂男「<地域主権を考える>」(『地域政策』No.35、三重県政策部企画室、2010年春季号)

地域政策 No.35(2010・春季号)

地域政策 No.35(2010・春季号)

 木佐先生がご自身のブログで取り上げられていたので、買って読んでみました。『地域政策』の特集記事と言うことで、「地域主権改革」が取り上げられているのですが、その中の1本です。地方自治を勉強されている学生さんや、自治体職員の方にはおススメの1本です。
 理論面から実態面の双方に目を配りながら、現政権地域主権改革に対する検討が行われています。非常に簡潔にまとめられているので読みやすいです*1。読みながら、「ですよねー。」と思うところが沢山ありました。個人的には、もう少しまとまった分量のものが読んでみたかったです。

  • 熊野直樹「バター・マーガリン・満州大豆―世界大恐慌期におけるドイツ通商政策の史的展開」(熊野直樹他『政治史への問い/政治史からの問い』(法律文化社、2009年)

政治史への問い/政治史からの問い (法律文化ベーシック・ブックス)

政治史への問い/政治史からの問い (法律文化ベーシック・ブックス)

 母校関係者でもう1つ。テキストというよりは、入門書と副読本を兼ねているような印象の本です。面白かったです。他の項目は、未読なのでよく分かりません。

 ジョンズホプキンス大学公衆衛生大学院の講義スライドです。人口統計のベースとなる出生、死亡等の記録や定義の話、センサスの話などがスライド化されています。読んで面白いという内容のものではないです。

行政法の実効性確保 (上智大学法学叢書)

行政法の実効性確保 (上智大学法学叢書)

 行政法行政学、立法学、政策学等をやっている学生さんには是非読んでいただきたい。具体的な行政活動の中で、どのように法が執行されているのかがよく分かる論文です。私自身、あまり馴染みのない分野だったので大変興味深く読むことができました。主に都道府県が行っている漁業関係の取り締まりが題材に書かれているのですが、それらと比較する形で警察、海保、漁協など、様々な取り組みが分析されています。どちらかといえば、理論派よりも実践派な学生が好みそうな内容なのですが、ぜひ理論派の学生さんに読んで欲しい一冊です。非常に読みやすく書かれていると思います。
 教科書で習う行政法と言うのは、非常に平面的・画一的といいますか、ある国法があれば全国どこへ行っても同じ金太郎飴のような立法・執行・解釈で行政活動が展開されているような印象を受けてしまいがちなんですが、実際には、条例の立案の分野は言うまでもなく、法令の解釈から、法の執行まで、程度の差こそあれ実施主体ごとの多様性と言うのが存在しています。特に、漁業の取締りの分野では、そういう傾向が強いのだなというのを認識させられました。

*1:他方で、憲法自治法、歴史、比較法的な知見を前提に書かれていますので、表面的に読み取れる事柄以上に、広く深い要素を含んでいるのではないかと思います。