最近、買った本

例解 行政法

例解 行政法

 京都大学准教授の原田大樹先生*1がお書きになったテキストです。パラパラと興味のあるところを拾い読みしましたが、これは素晴らしい、非常に素晴らしい。学生さんもそうですが、公務員も「買い」の1冊だと思います。
 基本的に、行政法総論(行政過程論・行政救済論・行政組織法)から行政法各論(簡単に言えば個別の行政分野の法制度)が500ページにギュッと凝縮されています。
 この教科書のメインは、後者の行政法各論(いわゆる「参照領域」)になるため、行政法総論(行政過程論、行政救済論)の記載は150頁と非常にコンパクト、しかし、中身はギュッと詰まっていて、決して、レベルを落としているという印象はうけませんでした。
 各論部分は、租税法、社会保障法、環境法、都市法が取り上げられていますが、まず、この選び方が素晴らしいと思います。伝統的な行政法各論では、警察とか公用負担とか公物とか財政とかが伝統的な領域ではないかと思いますが、これは、実務的にはともかくも学生がやるにはマニアック過ぎますし、個別の政策分野の法律を取り上げたものもありますが、あまりに内容が薄くて、正直、その程度の内容ならわざわざ読む必要はないかなと印象を受けるものが多かった(というか、各論を取り上げるテキストなど、殆どないんですけどね。)ような気がします。それに比べて、本書で取り上げられる4分野は、現代の基本的な法制度を学んでいく上で、規制、給付その他の仕組みも含め色々な素材が埋もれている分野です。また、記述については、私が実務的にやっているところを読ませさせていただいただけですが、書き方が平易でも内容は高度で、木を見て森を見ないような記述の本も多い中で、政策論的な部分をキチンと踏まえつつ、きちんと行政法的テーマが取り上げられています。
 あと、全体的に教育的配慮がされている教科書だなと思いました。まず、表や図での整理が行われており、視覚的に見やすい。また、学習のステップアップについては、総論部分(メインテーマが各論のテキスのためか)は、判例集や主要教科書の該当部分の紹介を除いては細かな脚注はありませんが、末尾に学習用の参考文献が示されており、次の学習へつながる配慮がされています。特に、これまでの教科書の参考文献というと、大学の紀要とかモノグラフィーとか、とても教科書程度で得た知識では太刀打ちできないような高度な文献が挙げられていた気がしますが、本書は、キチンと次の「1歩」に相応しいものを選んでいるような印象を受け、著者のコメント載っています。また、法学教室とか、比較的入手しやすい文献が載っているので、公立図書館の蔵書でも読めるのではないかなと思いました。対する各論部分は、脚注がかなり丁寧につけられている分野と、総論と同様に細かいところは他論文にゆずっているものを使い分けていますが、いずれも親切設計です。
 最近、仕事が忙しく、給付行政をやっている割には行政法の知識を使わずに生活しているので、もう少し余裕ができたら(←「いつだよ」というツッコミは置いといて)リハビリと勉強も兼ねてじっくり読んだみたいなと思いました。
保障行政の法理論 (行政法研究双書 29)

保障行政の法理論 (行政法研究双書 29)

 書店で購入。帯に「私化によって国家は本当に撤退したのか」というフレーズがあって、2008年当時のジュリストNo.1356の特集「国家は撤退したか?―『規制緩和』と『リスク社会』―」が思い浮かんだわけですが、基本的に、行政実務では国家(地方?)が「撤退していない」領域しかやった事がないので(笑)お勉強のために購入。著者の生年を見たら私と2歳くらいしか違わないようで、もう、その年代の方が活躍しておられるのだなと思いました。ドイツ法を素材とした議論のようで高度な内容なのだろうとは思いますが、記述自体は読みやすく書かれているような印象を受けました。まあ、土日祝祭日も仕事が続く状況では、時間はないし、他にも積読本が山ほどある状態では読みたくても読めないのでしょうねぇ。 法時とジュリは、行政法関係の特集は買うようにしていますが、読む気力がないので基本積読本になっちゃうんですよね。

*1:私の卒業前後に母校の講師に就任された方ですので、私自身が直接教えを受けたことはありませんが、大学院在学中に運営されていた非公式掲示板については、休講情報がマメに更新されており非常にお世話になった記憶があります:笑