公務員試験の話(その壱)

 「公務員になりたい就活生 民間の採用鈍化で志願者急増中」(『AERA』2009年3月2日号)とのこと。



 実は、先日、自治体の採用活動の片棒を担いでしまった(?)私が言うのもなんですが、学生さんにおかれましては安易な考えで公務員を目指すのはやめましょう。役所だって民間企業だって同じだと思うのですが、採用サイドは少しでも優秀な人材を確保したいと思っているはずです。その意味では、役所の採用サイドが欲しい人材というのは、不況下であっても、しっかりと民間企業の内定がもらえるようなタイプの人材であって、「安定志向」で公務員を選んだりとか、「民間の採用は厳しそうだ」とかいう理由で公務員を選ぶ人間ではないでしょう。


(公務員試験の基本的な構造)
 基本的な認識として、公務員試験というのはそんなに簡単に受かるものではありません。国家?種であれば試験問題が難しいですし合格する人たちも優秀な人が多いと思いますし、国家?種や地方上級であれば試験科目がやたらと多く年毎でのペーパー試験での難易度の変化は基本的にないものの、多年度でトライしてくる受験層が多いですから、合格ラインというのは高くなってきています。

 試験について言えば、例えば地方公務員上級職(都道府県・政令指定都市)の場合には、第1次がペーパー試験、第2次から第3・4次が小論文、適正試験(内田クレペリン等)、集団討論、個別面接等になります。第1次のペーパー試験は、五肢択一の教養試験50問、専門試験50問程度で、1問を2〜3分程度で解いていくような感じになります。

 教養試験は、数的処理、判断推理、文章理解、国語(古文等)、英語、思想史、政治経済、日本史、世界史、地理、数学、物理、化学、生物、地学のフルコース。専門試験は、憲法民法行政法、刑法、労働法、政治学行政学、経済原論(ミクロ・マクロ)、財政学、経済史、経済政策、経営学などがでました。受験職種によって、科目構成が違ったり、科目の選択がある場合などもありますが、得意・不得意科目を見つけるにもフルで勉強しないといけませんので、最終的には全科目を何らかの形で勉強するような形なります。地方公務員の場合、あまり応用的な問題はでませんが、難しくないということは、それだけ暗記の量が増えるということですし、全体的な合格ラインを押し上げるだけですから、試験の難易度云々はあまり問題ではありません。
 第2次以降は1次に合格しないと受けられないわけですが、第2次以降についても、しっかり面接試験や討論等を実施していって人物評価をするような形になります。合格しようとすれば、第1次試験で高い点数を出して、かつ第2次以降でもしっかりと面接等の対応が出来ることが重要です。


(試験勉強の基本構造)
 科目を一通り予備校の授業等で勉強した上で、その後は、ひたすら過去問とぶつかります。その後、模擬試験などを受けながら得意・不得意や、実際の時間配分等を試行錯誤しながら本番まで過去問演習を続けることになります。


(とりあえず、otsukare_modeの体験談的公務員試験の話)
 私の場合、大学3年4月からお金を払って予備校にダブルスクール(地方公務員の場合、フルコースで受けて40〜50万円程度は必要)してましたし、模擬試験を受けたりするのも金がかかります。本試験自体には、受験料はかかりませんが、民間企業を受験する場合と同じく、合格するまで数回は試験会場までの旅費や宿泊費等が必要になります。公務員試験には、それなりに自己投資が必要です。


 私は、大学3年前半は大学に通いながら週2日程度は夜は予備校で授業、大学3年中盤から後半は毎日(土日も含む。)のように予備校の授業に出てました。もちろん、予備校というところは科目に関する知識を授業をするだけですから、自分で問題集を解いて行くための時間が必要で、私の場合、大学3年の春休みには知人と共に大学の図書館で学習会*1を主催し、この会だけで1人6〜7時間程度は毎日の勉強時間を確保した上で、その後は予備校の授業があれば2〜3時間程度は予備校に通い、予備校の授業がなければ自宅で同程度に勉強という生活を過ごしておりました。


 その間、友達は大学3年の春休みに内定なり内々定をもらって行くわけですから、自分達だけが孤島に取り残されていったような感じになり「ああ民間を受けておけばよかったなぁ」と思ったりしながら勉強をしていくわけです。民間企業を併願するツワモノもおりますが(基本的には地銀とか、公共系とか、大手企業とかかな?)、その分、勉強時間に制限を受けますからそれを天秤にかけなければなりません。*2


 そして、大学4年5月の国家?種試験を皮切りに試験がスタート。知力・体力といった受験戦略的と募集がある機関の関係から、民間企業のように何社も併願するわけにもいきませんが、直前期まで行われる模試も含めて5月〜7月までの間で多い人で1〜2週間に1回程度はペーパー試験を受けるような形になります。私は、2ヶ月間で4つ試験を受けました。試験の結果がでるまでタイムラグがありますので、毎回試験の出来に一喜一憂しながら、別の試験を受けていくような生活になります。


 そして、やっとペーパーの結果がでて合格できれば、今度は第2次以降の面接試験等を受けて行かなければなりません。地方自治体の場合にはペーパー試験での受験倍率で20〜40倍程度の倍率のところ3〜4倍まで絞り、2〜3回の討論・面接・小論等を加味して最終的な合否判断を出しします。対する、国の場合には、人事院主催の試験をクリア(国家?種、国家?種等)した後に、官庁訪問と言われる採用面接を通して何度も面接を行いながら段階的に受験生を絞っていく形になります。中央省庁であれば上京したり、国の出先や地方公務員であればその事務所がある街へ出向かなければなりません。
 私は、都合3回(第1次も含めれば4回)ほど地元に帰りましたが、朝から試験のあった日を除き、基本的に日帰りしました(中央省庁等で官庁訪問になれば、ホテル住まいになると思いますから地方出身者は大変かと思います。)。


 そんなこんなで、最終的な合格がでたのが8月末頃だったでしょうか。知人男性とお祝い飲み会をやったり、知人女性とお疲れ様会的なお食事会をやったりした記憶がありますが、もちろん不合格だった人は一般市町村等の職員採用試験などを受けたり、民間企業の秋採用などを探したり、留年なり浪人を考えなければなりません。


(ちなみに、公務員試験ではどんな人と戦わなければならないのか?)
 公務員試験というのは、欠員補充的な意味があるため採用枠にはばらつきがあります。ただ、年齢制限さえクリアすれば誰でも受けれる試験ですから、高倍率であろうが実際には、全員を相手に戦って合格を勝ち取るわけでありません。実際に、仮想敵が誰なのかといえば、まず旧帝大系、地方国立大学法・経済・社会学部系、有名私立大学系の新卒・既卒や、ベテラン浪人組などを相手に試験をするような感じになるでしょう。


(だから結論的言えば…)
 安易な気持ちで公務員試験の世界に入るのは危険です。公務員試験は、誰でも気軽に受けれますが、気軽に合格できる試験では決してありません。まして、民間企業の就職を活動を考えていた学生が安易に入り込んできて合格できるような、そんな甘いものではありません。実際、大手予備校の合格パンフレットの裏には、沢山の人が不合格になっているのだということを考えていただきたいと思います。

*1:各自2時間1コマで孤独に勉強し、1コマの終わりの時間帯に数的処理等の自作テスト、休み時間に知人らと勉強の悩み等を語らう。

*2:公務員試験をメインに、民間企業をすべり止めで受けるという考えは可能ですが、民間企業を受けて公務員をすべり止めというのは実際的は無理ではないかと思います。