<暫定税率>「東京都、独自課税も」石原知事

 ご存知のとおり、租税特別措置法の道路絡みの暫定税率部分については失効したわけですが、「<暫定税率>「東京都、独自課税も」石原知事」(毎日新聞平成20年4月4日配信)とのことで、やはり自治体サイドとしては年度内の歳入確保のために国を牽制したいという狙いもあるのでしょう。
(なお、以下の記述については、仮に石原都知事の言うような独自課税を行った場合の問題について、立法学的な興味から突っ込んでみたものですので、otsukare_mode自身が独自課税を望んでいるとか、あるいは現在の道路特定財源の制度体系について肯定的又は否定的に捕らえているということを意味するものではありませんのであしからず。)

 ただ実際問題として、自治体単独での独自課税の実施するというのは他の自治体でも同様のアクションがおこらない限りは立法論的にかなり難しいのではないのかなあと思ったりするわけです。
 都道府県法定外税を新設するとして、まず立法技術的な問題として、どの時点で課税するのかといことがあるでしょう。
 例えば、現在の揮発油税地方道路税のように製造場から移出した時点で課税すれば、特定の自治体で独自課税しても、課税した自治体に、他の課税していない自治体の製造場で精製されたより安い揮発油等が流入してしまうだけでしょう*1し、仮にそれがなかったとしても課税した自治体の揮発油等は他の課税していない自治体の業者は価格が高いといって引き取ってくれなくなるでしょう。そうなると結果的には、課税した自治体の製造場の経営が立ち行かなくなるだけかもしれません*2
 他方で、ガソリンスタンド等での小売の段階で課税する方法を用いるとなると、他の課税していない自治体と隣接する県境にあるガソリンスタンドは、客が来なくなってしまいますので赤字覚悟で販売価格を他の課税していない自治体のガソリンスタンドのレベルに下げなければならず今度は県境のガソリンスタンドが廃業せざるをえないかもしれません。その他、ガソリンスタンドでの販売時点で課税する方式では、揮発油税等の既存の課税と違いますので制度導入のコストが高くなる恐れがあります(まあ、製造場からの移出時に課税する場合もでも、揮発油税地方道路税国税だから都道府県に課税のシステムはないのでしょうが)。
 記事によれば、「卸売り・販売段階で課税する軽油引取税の方式を想定」とのことですが、この方法だと上記のような問題は発生しないのでしょうか?
 また、立法過程的な問題として国税たる揮発油税地方道路税地方税たる独自課税との関連も問題になるわけですが、地方税法上、都道府県法定外税の導入に必要な総務大臣の同意が取れるかどうか(同意の要件については、地方税法第261条を参照していたければ幸いですが、その前に、財務大臣の異議も制度上担保されています。)についても気になるところです。また、そもそも都道府県議会だって住民の支持を失うのを覚悟で増税するのかという問題もあります。
 まあ、そんなこんなで石原都知事の国に対する政治的アピールの意図は分かるにせよ、実際に導入するとなると結構問題があるのではないかなぁと思ったりする次第です。

*1:ただし、移出時点での税の上乗せ分が、他の課税していない自治体からの輸送コストを下回れば別ですが。

*2:もちろん、揮発油等の流通エリアが各都道府県内に限られれば話は別かもしれませんが。