林野庁「緑のオーナー制」投資9割元本割れ(朝日新聞)

 朝日新聞8月3日(金)付けの1面及び31面記事がありました。
 緑のオーナー制度と聞いて、ぱっと来ない方は、国有林を利用した分収育林のことだ言えば…やはり、ぱっとこないでしょうね(笑)


 制度的には、林野庁のホームページに紹介されておりますが、この事業の根拠法は「国有林野の管理経営に関する法律(昭和26年法律第246号)」第17条の2になるようです*1
 より一般的な分収林契約(育林・造林)に関する法律としては、「分収林特別措置法(昭和33年法律第57号)」がありますが、この法律は以前、同期からの個人的な質問があって、少し勉強したことがありました。

 緑のオーナー制度は一言でいえば、「国有林野について、契約により、一定の土地に生育している樹木を国以外の者との共有とし、その者の持分の対価並びに当該樹木について国が行う保育及び管理(以下「育林」という。)に要する費用の一部をその者に支払わせ、育林による収益を国及びその者(以下「費用負担者」という。)が分収するもの。」(国有林野の管理経営に関する法律題17条の2)のようです。

 朝日の記事としては、緑のオーナ制度について、制度発足当初、リスクについての説明が不十分だったということを問題にしているようですが、木材価格が法定価格でない以上は、元本割れのリスクがないということは一般的には考えづらいと思いますし、時代的にも私が生まれた翌年度(昭和59年度)に開始された事業のようですので、当時どれほど消費者に対してこの手の商品のリスクを投資者しようとする人へ説明すべきだと社会的認識があったのかはよくわからない部分ではあります。*2

 私がより問題だと思うのは、十年を超える木材価格の予想などというのは困難だと思いますので、行政として、それだけ利益が読みづらい商品を、国民に提供することの是非の問題です。リスクを説明していたとしても、国自身の事業運用のために、国のブランド力を背景にして金を集めて、元本割れしたら「残念でした」で済ませるというのは、国営の事業のあり方としてどうなのかという気がしなくもないところ。
 国有林保全自体は、治山治水の観点から国民全体の利益になっているわけですから、元本の全額とは言いませんが何割かを国で補償してもよいうという気がするのですけどねぇ。まあ、緑のオーナー制度自体の是非という問題はありますが。

*1:分収造林については、同法9条

*2:個人的にはリスクを説明すべきだったのではないかという見解を持っていますが。