小学校隣にラブホテル? 「教育環境損なう」住民に危機感

 産経新聞1月24日配信記事より 。記事を一読した後、某先生が授業で使いそうなネタだなーと思ってしまいました(^_^;)

 大阪市西区の市立本田(ほんでん)小学校のすぐ隣で、1月末に完成予定のホテル(20室)をめぐり「ラブホテルとして営業される可能性があり教育環境が損なわれる」と、保護者や周辺住民が反発している。市は「ビジネスホテルとして経営すると説明を受けている」として営業を認める方針だが、ホテルにはツインルームしかないなど建築主側の説明には疑問も。市議会では地元住民の陳情を受け、ホテルの規制強化を目指す動きが出始めた。

 このような問題が発生するのは、風営法による「店舗型性風俗特殊営業(風営法第2条第6項第4号)の規制に穴があり、かつ、旅館業法第3条第3項が専ら事前審査方式になっているからこうなるわけです。まあ、風俗営業については規制自体が難しく法の穴をすり抜ける業者が多いであろうこと、旅館業法の方は、そもそも立法趣旨が風俗営業の規制にあるのだからしょうがないといえばしょうがない部分もあるわけですが…。


旅館業法(昭和23年法律第138号)
第2条6項  この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
(中略)
四  専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む。以下この条において同じ。)の用に供する政令で定める施設(政令で定める構造又は設備を有する個室を設けるものに限る。)を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業
(後略)

旅館業法施行令(昭和32年政令第152号)
(法第二条第六項第四号 の政令で定める施設等)
第三条 法第二条第六項第四号 の政令で定める施設は、次に掲げるものとする。
 一 レンタルルームその他個室を設け、当該個室を専ら異性を同伴する客の休憩の用に供する施設
 二 ホテル、旅館その他客の宿泊(休憩を含む。以下同じ。)の用に供する施設であつて、その食堂(調理室を含む。以下同じ。)又はロビーの床面積が、次の表の上欄に掲げる収容人員の区分ごとにそれぞれ同表の下欄に定める数値に達しないもの(前号に該当するものを除く。)

 収容人員の区分         床面積
                食堂      ロビー
 三十人以下        三十平方メートル 三十平方メートル
 三十一人から五十人まで  四十平方メートル 四十平方メートル
 五十一人以上 五十平方メートル 五十平方メートル

2 法第二条第六項第四号 の政令で定める構造は、前項第二号に掲げる施設(客との面接に適するフロント、玄関帳場その他これらに類する設備において常態として宿泊者名簿の記載、宿泊料金の受渡し及び客室のかぎの授受を行う施設を除く。)につき、次の各号のいずれかに該当するものとする。
 一 客の使用する自動車の車庫(天井(天井のない場合にあつては、屋根)及び二以上の側壁(ついたて、カーテンその他これらに類するものを含む。)を有するものに限るものとし、二以上の自動車を収容することができる車庫にあつては、その客の自動車の駐車の用に供する区画された車庫の部分をいう。以下同じ。)が通常その客の宿泊に供される個室に接続する構造
 二 客の使用する自動車の車庫が通常その客の宿泊に供される個室に近接して設けられ、当該個室が当該車庫に面する外壁面に出入口を有する構造
 三 客の宿泊する個室がその客の使用する自動車の車庫と当該個室との通路に主として用いられる廊下、階段その他の施設(当該施設の内部を外部から容易に見通すことができるものを除く。)に通ずる出入口を有する構造
3 法第二条第六項第四号 の政令で定める設備は、次の各号のいずれかに該当するものとする。
 一 動力により振動し又は回転するベッド、横臥している人の姿態を映すために設けられた鏡(以下「特定用途鏡」という。)で面積が一平方メートル以上のもの又は二以上の特定用途鏡でそれらの面積の合計が一平方メートル以上のもの(天井、壁、仕切り、ついたてその他これらに類するもの又はベッドに取り付けてあるものに限る。)その他専ら異性を同伴する客の性的好奇心に応ずるため設けられた設備
 二 次条に規定する物品を提供する自動販売機その他の設備
 三 第一項第一号に掲げる施設にあつては、前二号に掲げるもののほか、長いすその他の設備で専ら異性を同伴する客の休憩の用に供するもの

 しかし、子どもたちによりより教育環境を提供しなければならないのは自治体の義務なわけでして、そこを何とかしなければならないわけで…。


(以下、私の雑感を書いたもので、別に法律論として正しいかどうかについてはまったく調べておりませんので悪しからず…) 


 現行法制の枠組みでいけば、旅館業法第3条第1項の許可を出した上で、ラブホテルとしての営業が始まった後に旅館業法第7条第1項による立ち入り検査をして、法令違反を見つけ出し、第8条により営業停止等の行政処分を行なったうえで、更に業務の改善が見られないようならば許可の取消を行なえばいいといういことになるのでしょうか?

旅館業法(昭和23年法律第138号)

第三条  旅館業を経営しようとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。第九条の二を除き、以下同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、ホテル営業、旅館営業又は簡易宿所営業の許可を受けた者が、当該施設において下宿営業を経営しようとする場合は、この限りでない。
2 都道府県知事は、前項の許可の申請があつた場合において、その申請に係る施設の構造設備が政令で定める基準に適合しないと認めるとき、当該施設の設置場所が公衆衛生上不適当であると認めるとき、又は申請者が次の各号の一に該当するときは、同項の許可を与えないことができる。
 一 この法律又はこの法律に基く処分に違反して刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して三年を経過していない者
 二 第八条の規定により許可を取り消され、取消の日から起算して三年を経過していない者
 三 法人であつて、その業務を行う役員のうちに前二号の一に該当する者があるもの
3 第一項の許可の申請に係る施設の設置場所が、次の各号に掲げる施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。以下同じ。)の周囲おおむね百メートルの区域内にある場合において、その設置によつて当該施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認めるときも、前項と同様とする。
 一 学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第一条 に規定する学校(大学を除くものとし、以下単に「学校」という。)
 二 児童福祉法 (昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項 に規定する児童福祉施設(以下単に「児童福祉施設」という。)
 三 社会教育法 (昭和二十四年法律第二百七号)第二条 に規定する社会教育に関する施設その他の施設で、前二号に掲げる施設に類するものとして都道府県の条例で定めるもの
4 都道府県知事は、前項各号に掲げる施設の敷地の周囲おおむね百メートルの区域内の施設につき第一項の許可を与える場合には、あらかじめ、その施設の設置によつて前項各号に掲げる施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがないかどうかについて、学校については、当該学校が大学附置の国立学校(学校教育法第二条第二項 に規定する国立学校をいう。)であるときは当該大学の学長、高等専門学校であるときは当該高等専門学校の校長、高等専門学校以外の公立学校であるときは当該学校を設置する地方公共団体教育委員会高等専門学校以外の私立学校であるときは学校教育法 に定めるその所管庁の意見を、児童福祉施設については、児童福祉法第四十六条 に規定する行政庁の意見を、前項第三号の規定により都道府県の条例で定める施設については、当該条例で定める者の意見を求めなければならない。
5 第二項又は第三項の規定により、第一項の許可を与えない場合には、都道府県知事は、理由を附した書面をもつて、その旨を申請者に通知しなければならない。
6 第一項の許可には、公衆衛生上又は善良の風俗の保持上必要な条件を附することができる。

第七条 都道府県知事は、必要があると認めるときは、営業者その他の関係者から必要な報告を求め、又は当該職員に、営業の施設に立ち入り、その構造設備若しくはこれに関する書類を検査させることができる。
(以下略)

第八条 都道府県知事は、営業者が、この法律若しくはこの法律に基づく処分に違反したとき、又は第三条第二項第三号に該当するに至つたときは、同条第一項の許可を取り消し、又は期間を定めて営業の停止を命ずることができる。営業者(営業者が法人である場合におけるその代表者を含む。)又はその代理人、使用人その他の従業者が、当該営業に関し次に掲げる罪を犯したときも、同様とする。
 一 刑法 (明治四十年法律第四十五号)第百七十四条 、第百七十五条又は第百八十二条の罪
 二 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 (昭和二十三年法律第百二十二号)に規定する罪(同法第二条第四項 の接待飲食等営業に関するものに限る。)
 三 売春防止法 (昭和三十一年法律第百十八号)第二章 に規定する罪
 四 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律 (平成十一年法律第五十二号)に規定する罪


 しかし、第3条第3項は許可要件なわけですから、直接的に違反行為の根拠に使っていいのかどうかという気もしますし、具体的な違反行為として指摘可能なのは第4条と第6条ぐらいになると思います。でも第4条は、衛生管理上必要な処置をとる義務ですから、普通ホテルならクリアしていると思いますし、宿泊名簿提出に係る第6条第1項の違反を根拠として許可の取消処分は厳しいのではないかと(;一_一)宿泊者名簿の提出があって、ありもしない名簿を提出したのが明白あれば第11条第1項違反ということで罰金を取ればよいのかもしれませんが、名簿があって名簿の記名率が悪い(?)というレベルの話であれば行政指導の対象とすることはできても最初から行政処分で対応することが限界があるでしょうね。実際、他にも同様な偽装ビジネスホテルがあった場合に、同様の立ち入り検査を実施しているのか?自分のホテルだけをピンポイントで攻撃してきるのではないのか?という部分を相手方業者から突かれると非常に痛い。

第四条 営業者は、営業の施設について、換気、採光、照明、防湿及び清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければならない。
2 前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める。
3 第一項に規定する事項を除くほか、営業者は、営業の施設を利用させるについては、政令で定める基準によらなければならない。

第六条 営業者は、宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の事項を記載し、当該職員の要求があつたときは、これを提出しなければならない。
2 宿泊者は、営業者から請求があつたときは、前項に規定する事項を告げなければならない。


 そうであれば、許可時点で第3条第4項により近隣の小学校を所管する教育委員会に意見書を提出させ、旅館業法第3条第6項に基づき、第3条第3項にいう「清純な施設環境が著しく害」しないようにすること等を特に許可条件として附した上で、違反行為があれば営業停止又は許可取消という方向に持っていくのがセオリーだということになるのでしょうか?これならばピンポイントに対象業者に狙い撃ちはできそうな気がしなくもないです。ただ、自分が業者の立場だったら、行政手続きの場面で旅館業法の規制趣旨あたりを根拠にしたうえで、規制趣旨を逸脱した過剰な許可条件であるといいて許可条件の不当性を主張するでしょうね。


 なお、たとえ上記方法によって取締りが可能になったとしても、許可を出して違反行為が確認することが前提ですので、対応が事後的であまり意味がないといいますか。業者だって、営業に関して資本を投下するわけですし、住民や保護者の方々にしてみれば、まず営業させないことが第一でしょう。


 立法論的には、正攻法で店舗型性風俗特殊営業に関する政令上の用件を改める方法があるわけですが、実際問題、新たな規制を設けても、そこをすり抜ける業者はでてくるでしょう。逆に、規制目的が違うのを承知の上で、旅館業法第3条第3項の要件を許可時点の要件とするだけなくて第7条の2の命令の根拠にするとか、第する方法はありうるのだと思うのですが、行政処分の要件にしては基準が緩やか過ぎて法制的にアウトになりそうな気がしなくもない。いずれにせよ、国の立法的措置を待たねばならないので、自治体レベルでできる対応はマスコミを通じて世論に訴えるぐらいのことしかできない。


 そうすると、自治体的にはどうやって規制するのでしょうか?ホテルの外装の色彩基準あたりを定めて景観的な攻め方でいくのかなあ?それとも、直接的に立地できないことにしてしまうとかもできるんですっけ?青少年の健全な育成に配慮して、市町村長が自ら許可制なり届出制を敷くということがありうるのかどうか?まあ、どーも無理そうな気もするのですが、勉強不足なのでよく分かりません。記事の最後に出てくる、「さらに旅館業法関連の市条例の改正なども視野に入れて、規制強化の検討を始めている。」という話ですが、旅館業法関連の市条例というと、旅館業法第4条第2項に基づくものだと思うのですが、大阪市例規的には「旅館業の施設の構造設備の基準に関する条例(平成15年条例第2号)」になると思うのですが、これって思いっきり衛生基準等に基づくものであって、風俗営業規制をしようとするのは規制目的の逸脱の気が…。


 まあ、大阪市のお手並み拝見といった感じでしょうか。


 あと、実はこっちの方が気になったのですが「清純」って法令用語だったんですね(笑)