国交省キャリア向けマニュアルについて

 すでに国家公務員の方たちのブログでいくつか取り上げられておりますが、読売新聞の記事に出てるやつですね。実は、政策立案のウェイトが高いであろうキャリア官僚の世界と、執行業務が多数を占める地方公共団体とでは話が違ってくるのは当然の話ではありますが、一般論としてテレビなどで現在での官公界を批判して「マニュアル行政」などといわれることがありますが、実は世の中で言われているほど行政機関には「マニュアル」なるものはありません。例えば、新規施策の立案や企画調整などの業務については、恐らく先輩や上司の後姿を見たり、指導されたりしながら体得していくものであってOJTメインで習得していくものであると思いますし、執行系の業務については、法令・条例・規則を始め訓令・要綱・要領・通知など様々なルールがあり、それに則って仕事しているのですが、日々の業務をどの手順でどのような点に注意しながら業務執行すればよいのかなどを書いた「手引書」などの類はないわけです。
 このことについて、私は、前者については果たしてマニュアル化が可能なのかどうかということについて、多少懐疑的でなのですが、後者についてはマニュアル化が実現すれば相当程度に業務の負担は軽くなるし、業務の効率性は改善すると考えています。その理由としては、第1にはマニュアルを作ることは、単に現在の業務の執行方法を記述するに止まらず、その過程の中で現在の業務の流れを洗い出すことにほかなりませんから、将来的に無駄な作業・手順はそぎ落とし、業務執行を洗練し効率化することに寄与するのではないかということがあります。第2には、マニュアルの中に業務の執行における注意点やポイントを記述していくことで、先達が獲得したノウハウを次へ伝えていくことが出来る。第3には、当然に仕事を習得するために必要な時間を短縮することにつながると言う利点があると考えています。マニュアルというのは、当然ただの手引書ですから、それを作れば問題が全部解決するわけではないのですが、省庁や部局の統廃合をして行政改革をやった気になったり、莫大なコストを投じてITシステムを構築するよりは遥かに安上がりで、かつ住民の利便性向上に資するのではないかと思っています。
 しかしながら、他方において、職員が日々の業務の片手間に引継書を書くという程度のマニュアルだったら作る意味がないわけで、庁内にベテラン経験者からなるプロジェクトチームなりを作って、マニュアル化が容易なもの、またはマニュアル化の必要性が高いものから順に作って、現場の担当者と対話しながら作らないと作っても読まない、あるいは書いてあることが役に立たないものしか出来ないような気もしています。また、マニュアル化の過程で適宜、規則や既存の要綱、要領の改訂も必要になってくるでしょう。
 なお先に、政策立案または企画調整などの業務がマニュアル化が可能なのかということを言いましたが、これはどちらかというとマニュアル化というよりは、少人数演習とかゼミ形式などで疑似体験しながら学ぶことの方が適当な仕事なのではないかなと思ったりすることがあります。ただ、それこそ1〜2日ぐらいで形だけやって終わるような研修ではなくて、最低でも2〜3ヶ月ぐらいの時間をかけてじっくりやるべき内容だと思います。その意味で、自分が参加した立法学ゼミは好適な学習の場だったと思うわけで、予算関係を除いて、立案から法制執務まで一通り疑似体験できましたからねぇ。まあ、毎週発表だったので何冊も本を読みながらレジュメをまとめたりする作業は大変でしたけどね。