やはり、これからのスタンダードは宇賀・概説なんですかねぇ

 田中孝男先生のブログを拝見していたら、宇賀先生の行政法概説が品切れとのこと。Ⅰの初版をはじめてみたときには、説明も詳細で、丁寧だったし将来的なスタンダードテキストになるのだろうなと思ってはおりましたが、やはり人気があるのでしょうね。同書Ⅰはいわゆる「法的仕組み」論を用いて説明しているため*1、地上・国Ⅱレベルの行政法試験対策では、伝統的行政行為論のウェイトが類書に比べて高い原田・要論の基本書的ポジションは「当分の間」変わらないというのが私の読みです。
 それはそれとして、個人的に最近思うこととして、法科大学院の登場以降やたらと出回っている概説的な教科書というのは、書店で立ち読みする限りあまり面白いものではないように思います。まあ、従来の著名な教科書が体系書的な趣が強すぎたというのは批判されるべきところかもしれませんが、概説的な教科書を学び終えた人が、更に次のステップに進むための教科書の層が厚くなるのを期待して止みません*2
 ちなみに、私の独断と偏見でお勧めの行政法教科書というのは、藤田先生の行政法(総論)ですね。叙述の仕方が非常に好きで、伝統的行政法の理念型から現在の諸所の対立する行政法体系なり学説なりを上手に分析しているように思います。学部3年のときに始めてゼミ発表で当たった「もんじゅ」判決の時に、塩野Ⅱが書店になくて代わりに買ったのが第4版でした。同著『行政法入門』*3等に比べると、はるかに難解なのですが、法律の留保の部分の大橋先生の説の論駁の部分など、非常に興味深く読みました。。

*1:同じ法的仕組みの小早川(上)に比べればはるかに読みやすい

*2:もちろん、百選・争点・対話で学ぶ・法教とかで随時補えなくはないのですが…近年、一部においてやたら分厚く・詳細になりつつある民法などの本に比較すると、行政法のテキストはその方向での発展を見せません。

*3:ちなみに、これは非常に良い入門書です。