地方自治法を学ぶためのツールについて

 以前、地方自治法のテキスト等について取り上げたことがありましたが、もう少し詳しく書いたので掲載します。

0.はじめに
 以前も紹介したことがあるのですが、自治体職員になられた新人職員の方に、まず読んでいただきたい本として、

自治体法務入門

自治体法務入門

があります。この本は、大学教員や自治体職員が共同で執筆している本で、自治体職員が日常で行っている業務のすべてを「法務」と捉え、職員一人ひとりのスキルアップを図ることを目指して書かれています。内容は、平易に書かれていて幅広いテーマが扱われていますが、あまり細部に拘泥することなく自治体職員として必要となる法務の知識を提供してくれる本だと思います。

1.地方自治法を学ぶための基本書―入門者編―
 地方自治法を取り扱った本は、世の中に沢山ありますが、私の趣味で3冊紹介することとします。なお、以下の3冊についてカテゴリ的に入門者編扱いにしていますが、一般的な4年制大学法学部あたりの地方自治法の指定教科書レベルの内容になりますのでご注意ください。

新版 地方自治の法としくみ

新版 地方自治の法としくみ

 行政法の研究者として著名な、原田尚彦先生のお書きになっている地方自治法の本です。行政法の基本書として有名な『行政法要論』もそうなのですが、非常に分かりやすく書かれている本だと思います。
ファンダメンタル地方自治法

ファンダメンタル地方自治法

 共著の地方自治法のテキストです。前述の原田・法としくみと同様に読みやすい本だと思います。大きな特徴といえば、地方自治法の歴史的な話等に十分な説明をおいている点です。
新現代地方自治法入門 (現代法双書)

新現代地方自治法入門 (現代法双書)

 こちらも共著のテキストになります。私は、この本を持っていないし、借りて読んだことがないのですが、指定教科書等にはよくあがるタイトルです。

2.地方自治法を学ぶためのツール―六法編―
 地方自治法を学ぶ上で忘れてはならないのは、いわゆる六法の存在です。もちろん、大学生が勉強で使うようなコンパクトサイズの六法等の一般的な六法にも地方自治法は収録されています。しかしながら、世の中には地方自治関係の法令に特化した六法があり、こちらには自治法・自治令・行政実例その他地方自治関連の主要な諸法規が収録されており実務的にもよく使うものかと思いますので、そちらを3冊ほど紹介します。
 なお、平成18年度自治法改正に伴う自治令改正については、財務関係の規定の部分が平成19年2月下旬までずれ込んだ関係上、平成19年度版の六法には反映されていなかったと思いますので、その点までフォローした六法を購入する場合には平成20年版の六法に頼ることになると考えます。

地方自治ポケット六法〈’07〉

地方自治ポケット六法〈’07〉

 学陽書房から出ている学習用の地方自治特化型六法です。その特徴としては、第1に「薄さ」です。少し集めの文庫本サイズで、かさばらない。第2に「財務三段組」の採用です。後述するように、学陽書房は、より専門的な地方自治小六法を出版していますが、その最大の特徴である財務三段組(地方自治法の財務に関する部分だけ、上から対応関係にある自治法−自治令−行政実例が並べて表示してある)が採用されていることです。
地方自治小六法〈平成20年版〉

地方自治小六法〈平成20年版〉

 学陽書房から出ているもので、先のコンパクト六法がどちらかと言えば学習用であるのに対して、こちらの六法は実務家向け。収録法令も非常に特化していますので、仕事で使われている方も多いのではないかと思います。
自治六法 平成20年版

自治六法 平成20年版

 第一法規と並び法律関係の書籍に強い「ぎょうせい」の出している自治法に特化した小六法です。地方自治小六法に比べて、少しサイズが大きくずっしりくる感じでしょうか。私の父は、自治六法派だったので私も就職してからは自治六法を使おうと考え購入したのですが、仕事柄、財務三段組の地方自治小六法が使い勝手がよいので、現在では、仕事ではもっぱらそちらを使っています。自治六法には、最近では付録でCD-ROMがついています。

3.地方自治を学ぶための基本書―中級編―

地方自治法概説 第2版

地方自治法概説 第2版

 
 比較的新しく出た自治法のテキストで、情報公開、行政手続、国家賠償関係の著作で実務の方にも有名な東京大学の宇賀先生が書かれている自治法のテキストです。1で説明したテキストとの最大の違いは、発展性というか、脚注部分に参照すべき文献が掲載されていますので基本的なテキストを終えて次の一歩に進もうとする際に非常に重宝すると言うことです。また、自主司法権など従来の自治法のテキストでは扱われていないテーマなども取り上げられています。
要説地方自治法―新地方自治制度の全容

要説地方自治法―新地方自治制度の全容

 地方自治法の逐条解説(コンメンタール)を除けば、今、書店で手に入る既存の自治法関係の本では最も詳細に地方自治法が解説されている本です。実は、これまでに挙げた各基本書や後述する逐条解説の本に比べれば「袖に短し襷に長し」と言った感じもないわけでもないのですが、一般的な自治法のテキストでは説明が省略されるものの、実務上は皆がお世話になる財務の話等もきちんと取り上げられている本で、個々の条文の意味を調べたいけど逐条本では制度の全体像が分からないときに非常に重宝します。

4.地方自治法を学ぶためのツール−判例百選−

地方自治判例百選 (別冊ジュリスト (No.168))

地方自治判例百選 (別冊ジュリスト (No.168))

 法律を学習する上で欠かせないのが、判例を通した学習ですが、地方自治法という分野は法学の分野ではメジャーではありませんので、学習用判例集を含めて地方自治を取り扱った唯一の判例集ということになります。なお、有斐閣判例百選シリーズは、各分野の主要テーマの判例をピックアップし、その判例に対する学説の整理や批評などを大学の研究者等が行っているものです。元々判例百選の評釈部分の内容には、ピンきりあると言われていますので、内容を鵜呑みにはできないのですが、地方自治法について語る上で共通知識となる過去の判例については目を通しておきたいものだと思います。

5.地方自治法を学ぶためのツール−逐条解説本−

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

 「The 国定解説本」というのは言いすぎですが、どこの自治体に言っても必ず置いてある逐条解説本といえばこの本です。一昔前は長野士郎氏の本があった(だった?)*1わけですけれども、現在は松本英昭氏が著者ということになっています。決して内容的に面白い本ではありませんが、地方自治法を扱う上では決して避けて通ることができない本ではあります。ちなみに、値段は1万円を超えますので自家用に持つのはちと厳しいですかね。
地方自治法 (別冊法学セミナー―基本法コンメンタール (No.168))

地方自治法 (別冊法学セミナー―基本法コンメンタール (No.168))

 平成18年度自治法改正には対応していないという記憶があるのですが、松本逐条に並ぶわが国で2冊しかない(んでしたよね。少し記憶があやふやなのですが)地方自治法の逐条解説の本です(いや、古くは金丸三郎とかあったりするんですけど古すぎるので。)。前者の国定解釈本に比べて値段は抑えられています。


以上。えらくマニアックなことを書き綴った感じもしますが、私も流石に上記を全部読んでいるわけではなく、あくまでも情報提供のために書いているものですので悪しからず。というか、こういうことを知っている時点でマニアかorz。

*1:その意味では、逐条地方公務員法の著者もかわっているんですね。わけ分からん。